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井上尚弥vsスティーブンフルトンの展望

井上尚弥がSバンタムに上げた時に対戦する可能性のある現WBC・WBO世界Sバンタム級王者のスティーブン・フルトン(アメリカ)。対戦する上で大きな障壁となるのがプロモーターの違いだが、それはさておき対戦が実現した場合を予想する。

まずは現在(執筆時点)の両者のデータを比較してみよう。

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【井上尚弥】
年齢:29歳
戦績:23戦23勝20KO無敗
身長:165cm
リーチ:171cm
オーソドックス構え

【スティーブン・フルトン・ジュニア(Stephen Fulton Jr.)】
年齢:27歳
戦績:21戦21勝8KO無敗
身長:169cm
リーチ:179cm
オーソドックス構え
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両者とも全勝、年齢はフルトンが若干下だがそれほど大きなアドバンテージとは言えず、問題はリーチの差と開催が有力な地元アメリカでの試合の豊富さだろう。戦績ではKO率で井上尚弥が圧倒しているが、KOが少ないのに21戦全勝という戦績は、裏返せば僅差の判定を物にしてきたポイント稼ぐのに非常に長けた試合巧者と言えるだろう。

フルトンは下がりながらジャブ・ワンツーをうまく当てて近づいたらダッキングやクリンチ、ロープ際に詰まってもスウェーや巧みな身体の入れ替えでクリーンヒットをほぼ許さないやや消極的な戦い方が多いが、以下のように3戦連続でチャンピオンクラス(うち2人は無敗)を塩漬けにしている実力は評価に値する。

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【フルトンの直近の戦績】
2021年1月23日 WBO世界Sバンタム級タイトルマッチ スティーブン・フルトン3-0アンジェロ・レオ(119-109、119-109、118-110)
2021年11月27日 WBC&WBO世界Sバンタム級タイトル統一戦 スティーブン・フルトン2-0ブランドン・フィゲロア(114-114、116-112、116-112)
2022年6月5日 WBC&WBO世界Sバンタム級タイトルマッチ スティーブン・フルトン3-0ダニエル・ローマン(120-108、120-108、119-109)

※WBO王者のアンジェロ・レオや元2団体王者のローマンは完封したが、フィゲロアはドローもしくは負けだったのではとみる人も少なくない。
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実際フルトンの試合を見ると、中間距離では長いリーチを生かして鋭いワンツーを放ったり、近距離では頭を付けてフック・アッパーを多用し、ボディー打ちや上下の打ち分け、また片手をつかんだまま攻撃したり、詰められてもロープ際のディフェンスが上手く、一発の怖さは無いが引き出しの多さが窺える。仮にフルトンがコツコツ弱いパンチを当ててポイントを稼ぎ、初めから判定狙いに終始した場合、与ダメージでは井上尚弥が上回っていたとしても手数(軽いヒット)の多さなどにより、酷い地元アメリカ贔屓の判定に泣く可能性もあるのではと思う。またフルトンは中間距離が得意だが、ダッキングを多用し頭を付けての近接戦も厭わないのでバッティングやローブローの心配もある。

フルトン攻略パターンの1つとして、まず中間距離で戦わず間合いを詰めて乱打戦に持ち込む事が挙げられる。リーチの長いフルトンも意外と接近戦は苦手ではないが、左右どちらでもショートで倒せる井上尚弥は近距離でもフルトンに打ち負ける事は無いだろう。井上相手では不利と見たフルトンが長い手を使ってクリンチをしてくる可能性がある(片手を掴んでの攻撃はよく見られる)ため、それをさせないようにするのが近接でのフルトン攻略の鍵ではないかと思う。

中間距離で戦ったとしても、左右前後に動いて的を絞らせず範囲外からの踏み込みも早い井上尚弥がフルトンを見切った時点で捉える可能性が高い。リーチでは不利な井上尚弥だが、実は近接での乱打戦より、中間距離のほうが確実に仕留められる可能性が高いのではないかと思う。またフルトンはディフェンスに自信があるのかガードを低く構えがちで、ネリ同様あごひげを蓄えており顎が弱い可能性はあるが、最近の試合では顎を打たれてもダウンや効いたそぶりはほぼ見せていないため、うまく芯を外してクリーンヒットさせない技術に長けているのかもしれない。

フルトンは下がりながら戦う事が多いためディフェンス技術がクローズアップされがちだが、カウンターはそれほど多用せず、どちらかというと少しでもパンチを当てて(手数を出して)ポイントを稼ぐ事を重視している印象。厄介なのはフルトンがちょんちょんと軽く当てて、たまに鋭いワンツーを見せてジャッジの印象点を稼ぐような戦術を取ってきた場合。ただ、いくらパンチを外すのが上手いとは言え、それ以上に的確な強打でスピードのある井上尚弥から12R逃げ切るのは難しいだろう。

このように井上尚弥がフルトンに負ける可能性は現時点では低いと思われるが、今後もし負けるとすれば、フルトンのような黒人選手の可能性は大いにあると思う。ただフルトンのように正統派ではなく、何をしてくるか分からない変則タイプの黒人選手だと更に危険性が高い。フルトン対策としてだけでなく、今後世界で戦っていく事を見据えるのであれば、リーチが長くディフェンスの得意な身体の柔らかい黒人選手とスパーリングしたり、片手を掴まれた状態など反則まがいの行為も想定しておくべきではないかと思う。

海外では「いくら井上尚弥でも階級を上げたら悪童ルイス・ネリのように通用しない(パワー負けする)のでは?」という声も少なくない。実際フルトンも「井上の強打はもらわない、ネリと同じようになる…」などと豪語しているが、ネリのようにパワーだけに頼らない井上尚弥に関してはそんな事は無く、今までの対戦相手やスパーリング相手などの証言を踏まえると、今の体格でもSバンタムもしかしたらフェザーのトップクラスにも十分通用するのではないかと思う。

個人的な予想では、井上尚弥のモチベーション・コンディションがMAXだった場合、いかに消極的なフルトンでも8Rは持たずKOされると思うが、もし井上尚弥がアメリカでの1戦目(アントニオ・ニエベス戦)やイギリスでの試合(エマニュエル・ロドリゲス戦)のように、雰囲気に飲まれて硬くなってしまい序盤フルトンペースになって勢いづかせるようだとそれは分からなくなる。そのまま中盤まで本調子が出なければ、終盤は逃げ切られて判定も十分考えられるだろう。そうなった場合、地元判定の多いアメリカでの試合は非常にリスクを伴うが、フルトンのプロモーターもそれを考慮してアメリカでの試合を前提条件として交渉を進めてくるのではないかと思われる。

現状フルトンがどう吠えようと今までの双方の試合内容をみて井上尚弥がフルトンに負ける可能性はかなり低いと思うが、海外開催だとホテルでの隔離や突然のグローブの変更など不利な条件を飲まされてコンディションが万全でなかったり、先日の京口のメキシコでの試合のように非常に厳しいジャッジで減点を取られるなど不運が重なると、ホームタウンディシジョン(地元贔屓の判定)に泣かされる可能性もあるのではないかと思っている。ただ、個人的には日本開催より世界的に注目度の高いアメリカでの試合のほうが世界的に認められるため一日本人として楽しみではある。

日本や中立国での開催だった場合、試合前・試合中のアクシデントやジャッジの不正(ゴロフキンvsカネロ戦のジャッジ1名がカネロファン)などが無い限り、井上尚弥が負ける事はほぼ無いだろう。

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